2015.10.
タンポポ  キク科
蒲公英 ホコウエイ 民間薬・食品

■ タンポポは、ごく普通に見られる多年生草本で、葉や茎を傷つけると、白い乳液をだします。日本には十数種のタンポポが自生しているとされますが、分類未確認の種もあって、数には諸説があります。 タンポポ属の観察では、同定できない中間的形質の個体があり、また交雑の可能性もあって、分類が難しいグループのひとつにあげられています。 これはタンポポ属が、種として分化途中のグループであるためとみられています。
葉は倒披針形で、ほぼ全縁のものから羽状に深裂するものまで、時期や栄養状態によって、また個体差によって違いがあります。そのため、葉の形状による種の特定はできないとされます。 春、ロゼット状に展開した葉の中心部から花茎をたちあげ、1つの頭状花序をつけます。花茎は中空で、頭花には総苞内片と外片がつき、小花は舌状花だけで構成されます。 総苞は、総苞外片と内片のバランス、花弁との長さの比較など、種に特有の形状を持つことが多く、判別の手掛かりになります。
開花後には、いったん萎びたように花茎を横たえますが、種子が熟すと、再び花茎を立ち上げて、綿毛を球状に展開します。花床についた果実(痩果)は風を受けると、簡単に花床からはずれ、大きな綿毛と一緒に飛び立ちます。 属名 Taraxacum は、アラビア語の「苦い草」の意味の言葉由来とも、苦い草の名前が由来ともいわれます。


■ 都市部に見られるセイヨウタンポポは、在来種を駆逐して分布範囲を拡大しているというのが従来の見方でした。 しかし、各種の遺伝子調査によれば、在来種との交雑が半数以上あることが分かりました。アカミタンポポも、2〜3割は交雑種とみられています。 ともに、受精が不要の単為生殖が可能であるために、アカミタンポポは4〜6月、セイヨウタンポポは4〜9月と花期が長くなっています。
セイヨウタンポポは世界の温帯域に広がり、日本へは明治時代に渡来しました。 総苞外片は蕾のときから反り返り、長さは内片の半分強、外片の先端部は赤味を帯び、また外側に小さな突起がつきます。果実は灰褐色から茶褐色、赤実タンポポとの区別点になります。
属名 officinale は、薬効のある の意味で、根を健胃、利尿に用いました。葉は苦みが少なく、サラダに。
セイヨウタンポポ  Taraxacum officinale Weber ex F.H.Wigg.
アカミタンポポの果実は、暗赤色から赤褐色で、赤味を帯びていることから、和名がつけられています。 総苞外片が反り返りますが、セイヨウタンポポと比べると、頭花が小さく、全体的に小型です。また、セイヨウタンポポより、やや遅く開花する傾向があります。
属名 laevigatum は、無毛の、平滑な の意味。
アカミタンポポ Taraxacum laevigatum (Willd.)DC.

■ 2つの外来種と異なり、在来種は有性生殖であることが多く、4月から5月にかけて一斉に開花します。 周囲の草が成長する前に種子を飛ばし、陽が遮られるようになると、夏眠に入り地上部は枯れます。 一方、セイヨウタンポポは夏眠をしないので、日陰の環境には適応できず、適度な草地が残る地域では、在来種を見ることができます。
カンサイタンポポは、関西地方に多く、本州中部から沖縄まで分布します。カントウタンポポと比較すると、全体的に細く、頭花も小さいものになっています。 総苞外片の長さは、内片の半分以下で、幅は同程度、普通、内外片とも角状突起がほとんどなく、あっても小さなものにとどまります。
トウカイタンポポは、千葉県から東海地方にあって、総苞内外片とも最も大きな角状突起をつけます。総苞外片の長さは、内片の2/3程度と長く、内外片の幅は同程度です。 以前は、葉の広い種類をヒロハタンポポとしていましたが、現在はトウカイタンポポと同種とされています。 種小名 platycarpum は、大きな果実の。変種名 longeappendiculatum は、附属物のある の意味です。
カンサイタンポポ
Taraxacum japonicum Koidz.
トウカイタンポポ  T.platycarpum
var.longeappendiculatum (Nakai) Morita
カントウタンポポは、関東周辺にあって、花期は4〜5月、総苞片は上向きにつき、総苞内外片ともに角状突起があります。 総苞外片の幅が内片の幅よりやや広く、外片の長さは内片の半分から、2/3程度までになります。本種は、トウカイタンポポとエゾタンポポの中間種とみられています。

角状突起のほとんどないのが亜種の シナノタンポポです。 種小名 platycarpum は、大きな果実の。亜種名 hondoense は、本州の という意味。
カントウタンポポ Taraxacum platycarpum Dahlst.
シナノタンポポ
subsp.hondoense (Nakai ex Koidz.) Morita
エゾタンポポ Taraxacum venustum H.Koidz.は、中部地方から北海道まで分布していて、単為生殖を行います。 頭花は在来種の中で最も大きくなり、太い花茎には、軟毛が密生します。総苞内外片とも角状突起がほとんどなく、外片の幅が内片より広く、外片の長さは内片の半分程度です。

シロバナタンポポは、関東地方以西に自生していて、他のタンポポ属と比較すると、葉の色は、やや薄い緑色をしています。 エゾタンポポと同じように単為生殖を行い、総苞片には明瞭な角状突起があり、総苞外片は、反り返ります。種小名 albidum は、淡白色のの意。
シロバナタンポポ Taraxacum albidum Dahlst.
■ タンポポのゴボウのような根と茎葉を一緒に抜きとり、洗い乾燥したものが蒲公英(ホコウエイ)です。 民間薬の領域で、苦みのある煎液を、健胃、利尿、催乳などに用いました。在来種だけでなく、セイヨウタンポポも利用でき、効き目としては両者に差はないとされます。 タンポポの根は、コーヒーの代用にもされ、根を刻んでローストしたものが、タンポポコーヒーとして販売されています。 ノンカフェインとして、授乳期などカフェインを摂取したくないときに利用されています。

セイヨウタンポポが帰化した原因は明治時代のお雇い外国人教授が食用として持ち込んだものが逸出したともいわれています。 野菜としての品種もあり、遮光して軟白化した葉をサラダに利用します。太陽を浴びた野のタンポポも、少しの苦味がアクセントになり、サラダとして利用できます。 ただ、利尿作用があるので、食べ過ぎにはご注意を・・・。食用品種のあるフランスでは、タンポポ を ピサンリ pissenlit ( Pisse en lit )といいます。 意味は、ベッドでおしっこ、つまり、おねしょ のことです。
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