2015.09.
カタクリ / セイヨウカタクリ ユリ科
観賞用

■ もともとの片栗粉は、カタクリのりん茎(球根)のデンプン質で作っていました。 りん茎は、年々深く潜る性質がありますので、採取は大変な労力が必要だったと想像されます。現代の片栗粉は、ジャガイモ(バレイショ澱粉)を原料にしていますが、名前は昔のままで販売されています。 全国の落葉樹林の林床に自生し、スプリング・エフェメラル Spring ephemeral ※1 と呼ばれる春植物のひとつです。 まだ山の斜面などに残っていますが、開発による自生地の減少で、都市部では姿を消しています。

カタクリは、実生から開花まで7年の期間を要し、発芽から開花までは、1枚の葉を出すだけの周期を繰り返します。 葉には葉柄があり、葉身は広卵形、暗紫色の不規則な斑が入ります。 りん茎は円柱形で、養分が蓄えられてから、初めて2枚の葉を出します。 2枚の葉の間から花茎を立ち上げ、花は花茎頂に1個だけつき、下向きに開花します。花被片は赤紫色で6枚あり、花被片の先は大きく反り返り、基部には、暗紫色でW字型の模様が入ります。 雄しべは6本、葯は黒紫色の棒状、雌しべは淡い赤紫色を帯び、花柱は雄しべより長く、先は3裂します。 開花後、2ケ月ほどで種子ができ、6月には葉が枯れます。種子は褐色の楕円体で、蟻が好む種枕(エライオソーム)がついていて、直下に零れ落ちます。 蟻が種枕をエサとして巣に運ぶときに、エサにならない種子も一緒に運んでもらうことにより、種子播種が行われます。

■ 蕾と若い茎葉は、山菜としておひたしなどで食べることができます。 りん茎のデンプン質については、冒頭の通りです。 カタクリの学名は、北アメリカ産と同種説、ヨーロッパの種と同種説や変種説を経て、独立した種としての学名が提案されました。現在の学名は、5つ目になります。 属名 Erythronium は、erythros 赤 を意味し、花が赤紫色のヨーロッパ種に対してつけられたものです。 和名の由来には諸説あり、鱗片が栗の片割れに似ているので「片栗」説や、古名 ※2 からの転訛によるとする説などがあります。

※1 Spring ephemeral (春の儚いもの) 春の短い期間だけ地上部があり、夏は休眠して地上部はなくなり、翌年の春まで、鱗茎や地下茎で過ごす草花のことをいいます。他の植物の葉が展開して、陽が遮られる前に開花結実します。

※2 万葉集の「堅香子」がカタクリとみられています。 もののふの 八十乙女らが 汲みまがふ 寺井の上の 堅香子の花
まだ1枚の葉だけの鹿の子紋様の片葉 「片葉鹿子」 を語源として、カタハカノコから、カタカゴ → カタコ → カタコ百合 → カタクリ になったという説があります。 またカタカゴは、「傾(かたむ)いた籠(かご)」のような花の意味とする説もあります。
カタクリ Erythronium japonicum Decne.

■ セイヨウカタクリ Erythronium dens-canis はヨーロッパ原産で、草丈25cmほど、落葉樹林下に自生します。 カタクリ Erythronium japonicumと比較したとき、葉の斑紋は明瞭、花茎は茶色と、全体に色合いが濃くなります。 花被片の色は赤紫色からピンク、花被片基部の模様は、くすんだ黄色になります。日本と同様に、野菜(山菜)として利用されます。

英名は ( European ) Dog Tooth Violet ( 直訳すると「(欧州)犬歯スミレ」・・・スミレ科ではなくユリ科です。)、種小名 dens-canis は、dens 歯+ canis 犬 で英名と同じ意味です。 なお、北アメリカ産の流通名 キバナカタクリ を、セイヨウカタクリ と称することもあります。
セイヨウカタクリ Erythronium dens-canis L.
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