2015.08.
オタネニンジン  ウコギ科
人参 ニンジン ) [ 局 ] 漢方薬・食品

■ オタネニンジンは、朝鮮半島から中国東北部を原産とする多年性草本です。 茎は1本だけ立ちあがり、茎頂に長い葉柄を持つ葉を数枚輪生します。葉は掌状複葉で、倒卵形の小葉が5枚つき、縁には鋸歯があり先が尖ります。 3〜4年経って栄養が蓄えられると、葉の展開後に、茎頂に散形花序をつけた茎が伸長します。初夏に、花弁5枚、おしべ5本の黄緑色の小さな花を咲かせ、果実は夏に赤熟します。 果実はやや扁平な円形で、2個の種子が入ります。

根が淡い黄白色の直根で、肥大して途中から分岐する形が、しばしば人の姿に似るところから、”人参”の名がつけられました。 古い時代には、人の形に似ている根には、神秘的な薬効があるとも信じられていました。人参は、今ではセリ科のニンジンを指しますが、もともとはオタネニンジンの名称でした。 根が似ているので、名前を借りてセリニンジンとしていたものが、セリが抜けて、ニンジンの本家のようになっています。 オタネニンジンについては、朝鮮半島から輸入していたため、朝鮮人参や高麗人参の名前の方が、一般的な知名度があるようです。

日本には飛鳥時代から奈良時代に渡来したとみられ、以後、長い間、輸入に頼っていました。 東大寺の正倉院には、当時の人参が保存され、種々薬帳 ※1 にもその記載があります。 初めは栽培ができなかったので、自生地の山野で採取したものを輸入していましたため、非常に高価な生薬でした。 徳川幕府は栽培を試みていましたが、享保年間、生薬の国産化を目指した徳川吉宗の時代になって、初めて栽培に成功します。 その後、将軍家から諸藩に”種”を下賜したことから”御”がついて「御種人参」オタネニンジンの名前になりました。 現在は、主に長野県などで栽培されていますが、韓国や中国からも輸入しています。

■ 薬用には、細根を除いた主根を用い、湯通しして乾燥したものが白参、蒸した後に乾燥したものを紅参(こうじん)といいます。 成分のジンセノサイド ( ギンセノシド ) ginsenosido を含むサポニン混合物は、中枢神経を刺激し、興奮または抑制的に働き、疲労回復、血圧降下、抗ストレスの作用があります。 滋養強壮を目的とした漢方に配剤される代表的な生薬で、十全大補湯、補中益気湯などに処方されます。
属名 Panax は、pan 総て+ akos 治癒 を語源とし、万能薬の意味があります。種小名 ginseng は、人参の昔の中国の音から。元の和名(生薬名)は、漢名の音読みから。

※1  しゅじゅやくちょう、聖武天皇の妻の光明皇太后が、東大寺に奉納した舶来薬物の目録です。
オタネニンジン Panax ginseng C.A.Meyer 
このページの先頭へ