2015.08.
ムラサキ  ムラサキ科
紫根 シコン ) [ 局 ] 漢方薬、染料など

■ ムラサキは、朝鮮半島から中国大陸にかけて、東アジアの温帯地域に分布しています。 日当たりのよい、やや乾燥気味の草原を好む多年草です。日本では北海道から九州まで自生していますが、開発による自生地の減少が進み、絶滅危惧種になっています。
草丈は80cmほどになり、茎は直立して、上部で2〜3分岐します。葉は被針形で全縁、互生し、主脈側脈が窪み、地上部は全体に粗毛に被われています。 花期は6〜7月頃、上部の葉腋に、直径6〜8mm程度の花冠が5裂した白い花をつけます。花は茎頂に向かって次々とつけるので、花期は1ケ月に渡ります。 秋にできる種子は、2mmほどと小さく、淡いグレーで光沢があります。

■ 根を薬用とし、生薬名は紫根(シコン)といい、10月ごろに掘り出して乾燥させたものを使用します。 抗炎症作用、肉芽形成作用があり、皮膚病や凍傷、切り傷などの皮膚疾患の外用薬に用いられます。 華岡清洲 ※1 考案の、紫根を用いた紫雲膏もそのひとつです。現在では、医薬品の他に、紫根のエキスを利用した化粧品などもあります。

和名の由来は、ムラサキが群がり生える状態を表した、「叢れ咲く(むれさく)」が訛ったとされます。 その植物の赤紫色の根を染め物に使い、染め上がった色のことを、ムラサキで染めた色なので、ムラサキ色と呼ばれ、色の名前もムラサキになったとみられます。 学名の Lithospermum は、種子が硬いことから、石の種。 erythrorhizon は、赤い根 を意味します。

洋の東西を問わず、古くから紫色は王侯貴族の高貴な色 ※2 として尊ばれました。 聖徳太子の定めたとされる冠位十二階の最上位の「大徳・小徳」の冠も紫色だったと考えられています。 万葉集にもムラサキを詠んだ歌があり、ムラサキは美しいもの、好ましいものの例え ※3 とされていました。 飛鳥時代には、ムラサキが、全国各地から朝廷に献上されていました。 時代が下がって江戸時代になると、庶民にも利用できるものとなり、「江戸紫」の名で呼ばれ、粋でお洒落なアイテムとして庶民の人気を集めました。

※1 伝聞ではない記録として、世界で初めて全身麻酔による外科手術を、成功させたことで知られます。
   用いた生薬の配合量については、華岡清洲が秘密にして文書で残さなかったため、不明な部分があります。

※2 西洋のロイヤルパープルは、貝紫です。
※3 あかねさす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る [ 額田王 ]
   紫草の にほへる妹を 憎くあらば 人妻ゆゑに われ恋ひめやも [ 大海人皇子 ] 万葉集
ムラサキ Lithospermum erythrorhizon Sieb.et Zucc.
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