2015.08.
クワ  クワ科
桑白皮 ソウハクヒ ) [ 局 ] 漢方薬

■ クワ(マグワ 真桑)は中国原産で、養蚕用の桑葉をとるために導入された落葉高木です。 通常2〜3mの高さに剪定して栽培されますが、自然に成長すれば10mを超える樹高になります。葉は対生し、質はやや薄く、表面は艶があります。 葉身は楕円形や広卵形、浅く3裂するものなど多様で、縁には粗い鋸歯があります。
普通は雌雄異株、希に雌雄同株があり、4〜5月に新しい枝の葉腋に花序をつけます。 雄花序は穂状に多数の小花をつけ、長さ5cm前後になって下垂します。小花は淡黄色で、ガク片4、無花弁で雄しべは4本あります。 雌花序は多数の雌花が集まって、径1cm程の花序を構成します。雌花は、短い花柱の先が深く2裂して、2つの白い柱頭になります。

果実は柔らかい粒の複合果 ※1 で楕円体になり、初め赤く、7〜8月に熟すと紫黒色になり、生食やジャムに加工ができます。 やや未熟な赤い果実は、果実酒に利用されます。また葉は桑茶として、飲用されます。根の皮は、生薬名 ソウハクヒ 桑白皮 といい、消炎、利尿、鎮咳去痰、血糖降下作用があり、漢方処方に配合されます。

和名は蚕に関係する蚕葉(コハ)や、食葉(クハ)などからの転訛とされます。属名 Morus は、ラテン語のクワの古名から。その語源は、黒に由来する言葉とされ、熟した果実の黒色を意味したとみられています。 種小名 alba は、白色の の意味で、色づく前の未熟な果実が白いことから。

※1 多くの花が集まってできる果実が、全体でひとつの果実のように見えるものをいいます。
クワ(マグワ)別名 カラヤマグワ 唐山桑、トウグワ 唐桑 など Morus alba L.
■ 桑の葉には、あまり虫がつかない(食害を受けない)という傾向があります。理由は、桑葉に含まれる デオキシノジリマイシン ( 1-deoxynojirimycin、略称 DNJ )とみられます。 糖分を分解する酵素の働きを阻害する桑葉特有とされている成分で、小腸で糖分を分解する酵素 α-グルコシダーゼ の活性を阻害する作用があります。
昆虫や哺乳類などは、摂取した成分を腸から吸収して活動のためのエネルギーとします。このとき、分子量の大きな糖質は、吸収することができないため、糖分解酵素によって、小さな単糖類 グルコース(ブドウ糖)まで分解して吸収します。 α-グルコシダーゼ を糖分解酵素としている昆虫では、桑の葉を食べても十分な栄養価が得られないことになります。

例外は、カイコやクワメイガの種類です。 α-グルコシダーゼとは別の糖分解酵素 β-フルクトフラノシダーゼ を持っていてて、この酵素はDNJに影響されない特性があります。 これにより、カイコの仲間は桑の葉を食餌にできる優先的地位を獲得したといえます。

ヤマグワ  クワ科

■ ヤマグワは、日本の山野にも自生する落葉高木です。 樹高はマグワよりも小さく8m程度、普通、雌雄異株で、まれに同株があります。過去には、養蚕用に栽培されたこともありました。 生薬・桑白皮の基原植物のひとつともされていましたが、ヤマグワ基原のものは生産流通しない実情により、桑白皮の基原植物から除外されました。

ヤマグワの葉は、マグワよりも先が長く尖りますが、個体差があるため、葉だけで2種を分類するのは困難です。 雌花の花柱は、マグワが深裂するのに対して、ヤマグワは半分ほどの位置まで2裂します。果実が熟した後も2〜3mmのひも状の花柱痕が残るので、マグワと区別ができます。
種小名 bombycis は、ギリシャ語の 蚕の(または、絹の) に由来します。
ヤマグワ Morus bombycis Koidzumi
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