2015.07.
ケ シ  ケシ科
アヘン末  [ 局 ] 有毒・製造原料

■ ケシは地中海沿岸の原産とされ、麻薬が採れることで知られる1年草です。 草丈は100cm〜160cmになり、茎は直立し、まばらに粗毛をつけますが、品種によって大きなバラつきがあります。 葉は互生し灰緑色、葉縁には不規則な鋸歯があって波打ち、葉柄はなく基部で茎を抱きます。葉の表面はほとんど無毛で、葉裏も葉脈上にまばらに毛が生える程度です。
初夏、花は花茎に単生し、開花時に2片あるガクは脱落します。花冠は4花弁、色は白、赤、紫などあり、園芸的な価値も見受けられますが、一日花ですぐに散ってしまいます。 雄しべは多数、雌しべの花柱は不明瞭で、子房の上部に放射状の柱頭がつきます。果実は楕円形や扁平な球形で、完熟すると柱頭の下部に小さな穴が開き、種子がこぼれ落ちます。

アヘンの採取は、花後数日経過した未熟な果実(ケシ坊主)から行います。果実が小さいと採取が難しいので、摘花して仕立て、養分を集中させて育て、大きな果実を作ります。 専用の道具で果実の表面に縦にキズをつけ、にじみ出てくる不快な臭いのする淡い褐色の乳液をかきとります。 集めた乳液を、乾燥させたものが生アヘンになります。多くの労力が必要であるため、ケシの全草から抽出する方法も考案されています。

アヘンは中毒になると依存性が強い麻薬として有名ですが、人類は古くから薬用として利用していました。 アヘンには薬として有用な モルフィン(モルヒネ) morphine ※1 、コデイン codeine 、ノスカピン noscaphin 、パパベリン papaverine などの成分が含まれています。 麻酔、鎮痛、鎮咳などに使用され、ケシは人類の病苦を和らげてくれた、有益な植物といえます。 現在は、使用量のほぼ全量を輸入していますがが、戦前には日本でもケシ栽培を行っていました。その過程で収量の多い一貫種 ※2 が開発されています。 近年では、がんの疼痛抑制の効果について、再認識されています。

属名 Papaver は、papa お粥 + verus 正統の、純正の を語源とします。由来には、幼児に与えるお粥に、ケシの乳液を混ぜて寝かしたことからとする説、乳液がお粥に似ているからとする説があります。 種小名 somniferum は、眠りを運ぶ の意味です。

※1 モルヒネは、史上初めて薬用植物から分離抽出されたアルカロイドです。
※2 1反(約0.1ha)あたり1貫(3.75 Kg)のアヘンが収穫できるとしてつけられた品種名です。
 ケシ 一貫種 Papaver somniferum L.
 ケシ トルコ系品種 1 ボタン咲園芸品種 2・3
ボスニア系品種 4 インド系品種 5・6

アツミゲシ ケシ科
■ アツミゲシの和名は、1960年代に愛知県渥美半島で、逸出品の群生が発見されたことからつけられました。 以後、各地で雑草化して、毎年、相当数の抜き取り作業が行われています。

南欧から北アフリカに自生し、ケシより小型で草丈60cmほど、茎にはまばらに剛毛があります。葉は灰緑色で互生し、葉縁には鋸歯があり、基部は茎を抱きます。 形態的にはケシに類似しますが、ガク片に剛毛が密生する点が異なります。種小名の setigerum は、剛毛のある という意味です。 花も小型で、花冠は4枚、色は紅色や紅紫色など、また花弁基部に大きな斑紋が入ります。

果実(ケシ坊主)が小型であるため、かきとりの方法では乳液の採取が難しく、アヘンの製造は商業的になりたたないといわれています。 なお、ケシとアツミゲシは、葉が茎を抱くので、他のケシ属と見分けることができます。見つけた場合には、触らずに、関係機関まで連絡をしてください。
アツミゲシ Papaver setigerum DC.

ハカマオニゲシ ケシ科
■ ハカマオニゲシはイラン原産とされる多年草で、草丈は100cm以上になります。 茎は直立、葉は羽状に深裂して、ほとんど根元にあつまり、茎には小さな葉が互生します。茎や葉など全体に白い粗毛が密生し、オニゲシ(オリエンタルポピー)に似ます。 がく片の表面には寝た毛(屈毛)がつき、立っている毛(開出毛)のオニゲシと異なります。
花弁は4〜6枚、色は特徴のある鮮やかな深紅、花弁の基部には黒斑があります。花径は10cmほどの大型で、花の下に苞葉が5〜6枚つき、茎が枯れるまで残ります。

ハカマオニゲシ は、アヘンアルカロイドの成分・テバインを含んでいます。 アルカロイドは根に多く含まれるとされ、規制の対象になっています。 和名は苞葉を袴(ハカマ)に見立てての命名で、種小名 bracteatum は、包葉のある の意味です。
ハカマオニゲシPapaver bracteatum Lindl. オニゲシPapaver orientale L.
■  ケシアツミゲシハカマオニゲシは、2つの法律によって規制されています。 先ず ケシアツミゲシはあへん法により、 ハカマオニゲシは麻薬及び向精神薬取締法によって、規制されています。 鑑賞用の栽培を認める国もありますが、日本では、栽培することだけでなく、花弁の1枚を持つことも厳しく禁止されています。 例外は発芽しないように処理した種子で、ほとんどアルカロイドを含まないため、食用 ※3 として自由に所持販売することができます。 ケシの仲間でも、上記の種類以外のヒナゲシ、オリエンタルポピーなどはアヘンアルカロイドを含まないので、自由に栽培ができます。

※3 アンパンの上に、粒々が乗っていたらケシの種子です。ヒナゲシの種子を使うこともあります。

葉の形状 がく 茎・葉 苞葉 花、他 種名
茎を抱く 無毛 灰緑色、ほとんど無毛 なし 赤・白・赤紫など ケシ
茎を抱く 剛毛 灰緑色、疎らに剛毛 なし 赤・赤紫など アツミゲシ
羽状に深裂 屈毛 白い毛が密生 5〜6 鮮やかな深紅 ハカマオニゲシ
羽状に深裂 開出毛 白い毛が密生 0〜3 赤・橙・暗紫色など オニゲシ
羽状に深裂 剛毛 白い毛が密生 なし 赤・ピンク ヒナゲシ
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